遺留分の割合とは? 留保される財産の割合と請求額の計算方法について
2024/04/12
遺言書を利用することで相続財産の取得者やその割合を指定することができます。生前に贈与をしておいたり、死因贈与により財産を特定の者に渡すこともできます。
自分の財産だからといって完全に自由な処分ができるわけではありません。一定の相続人には、遺留分として相続財産の一定割合を確保することが法的に認められています。遺留分について権利を行使されてしまえば,相続させたかった人に相続させたかった相続財産がいきわたらない可能性もあります。
そこで,自らの相続について対策を始めようと考えている方、また、相続人となる方のいずれについても、遺留分に関する知識を持っておくことが大切です。特に重要なのは「法律上確保することが認められる割合はいくらなのか」「具体的な額の計算方法」についてです。これらにつき以下で解説をしていきます。
遺留分の割合
遺留分に関する規定は民法に置かれています。条文の内容に沿って説明をしていきます。
相続財産に対する遺留分全体の割合
(遺留分の帰属及びその割合)
第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に
規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に
応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
引用:e-Gov法令検索 民法第1042条第1項
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
上の条文は、遺留分の割合に関する規定です。
ただし、これは「総体的遺留分割合」であって、個別に請求可能なものではない点に留意しましょう。
同条項に定められているのは相続財産に対する遺留分全体の割合であり、“直系尊属(被相続人の親等のことです)のみが遺留分権利者となる場合には相続財産の3分の1”、“その他の場合には相続財産の2分の1”までが認められると記載されています。
「その他の場合」とは、具体的には以下のケースなどを指します。
・相続人が配偶者しかいない
・相続人が子しかいない
・相続人が配偶者と子のみ
・相続人が配偶者と親のみ
上記のケースで相続財産の価額が1,000万円だとすると、その2分の1である500万円は総体的遺留分ということになります。
遺留分権利者個別の割合
遺留分を行使できる相続人が1人しかいない場合、上に示した遺留分割合が相続人自身の遺留分ということになります。
遺留分を行使できる相続人が複数存在していることもあるでしょう。この場合は同条第2項の規定に従うこととなります。
相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条
及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
引用:e-Gov法令検索 民法第1042条第2項
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
第2項は、各人の法定相続分を乗じて個別の遺留分割合を算出することを意味しています。このときの割合は「個別的遺留分割合」と呼ばれます。
例えば,遺留分を行使できる相続人が子2人である場合には、総体的遺留分割合が相続財産全体の2分の1、そしてそれぞれの法定相続分も2分の1となりますので、各人の遺留分割合は相続財産の4分の1ということになります。
被相続人の父母のみが遺留分権利者であれば、相続財産全体の3分の1にさらに2分の1を乗じて、「各人の遺留分割合は相続財産の6分の1」ということになります。
遺留分を請求するときの計算方法
ここまでで説明した遺留分の知識をベースに、遺留分を請求するときの計算方法を説明していきます。
各人の遺留分を調べる
遺留分の請求ができるのは、遺留分の侵害を受けている場合です。つまり、遺留分として確保することができるはずの額すら取得できていない場合です。遺産分割等により取得した相続財産とは別に、さらに遺留分を取得することはできません。
そこでまずは計算の基礎となる「基礎財産額」を計算していきます。
おおむね被相続人の財産全体に値するのですが、相続開始直前に行われた生前贈与の額も加算する点に注意が必要です。
“相続人に対する生前贈与なら前10年分”、“第三者に対する生前贈与なら前1年分”を加算します。
逆に、借金などのマイナスの財産に関しては控除をします。
続いて、算出された基礎財産額に上で説明した個別的遺留分割合を乗じて、各人の遺留分を計算します。
侵害されている遺留分を調べる
計算された遺留分と同額以上に財産の取得ができているのであれば、遺留分の侵害があったとは言えません。
しかし遺留分に満たない財産しか取得していないのであれば、「遺留分が侵害された」と主張し、その分を回収するために相続財産を取得した者に対し請求をすることができます。
侵害された分は、個別的遺留分から実際に取得した分を差し引けばすぐに把握できます。
ただ、遺留分権利者自身が過去に生前贈与を受けていた場合、その分請求できる額は少なくなります。
しかも遺留分侵害額を算出する過程では、“生前贈与の時期”は考慮されません。相続開始の10年以上前であってもすべて計算に含まれます。
例えば、30年前に大きな贈与を受けていたのであれば、相続後に取得した分がゼロであっても遺留分侵害額請求ができない可能性があるということです。
計算が複雑になるケースがありますし、実際に請求を検討している方は弁護士に相談することをおすすめします。