近藤姫美法律事務所

交通事故における物損事故と人身事故の違い! 自賠責保険の適用や違反点数の加算など

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交通事故における物損事故と人身事故の違い! 自賠責保険の適用や違反点数の加算など

交通事故における物損事故と人身事故の違い! 自賠責保険の適用や違反点数の加算など

2024/04/19

 交通事故は日本中で毎日のように発生しています。事故の態様も様々です。ニュースなどで取りざたされる「人身事故」もあれば、「物損事故」と呼ばれるタイプの事故もあります。
 人身事故と物損事故にはどのような違いがあるのか、この記事では交通事故を起こしてしまった方にとって大きな関心事であると思われる“処罰・処分”や“賠償”等の問題に着目し、その違いを説明していきます。

 

 

物損事故とは

 

 

 物損事故とは、事故を起こしたものの死人や怪我人が発生しておらず、車両などの物に関する損失しか生まれていない事故のことを指します。

 これに対し人身事故とは、事故の結果、死傷者を出してしまった事故のことを指します。

 運転者が1人で壁や電柱に衝突してしまったときには物損事故に該当します(特に自分についてのみ損害が発生するような事故を「自損事故」や「単独事故」と呼んだりもします)。

 

 結局のところ“警察で物損事故として処理してくれるかどうか”でその後の処分等が変わってきます。他人を巻き込んだとしても、非常に軽微な事案であって被害者に処罰感情がないようなケースだと物損事故として処理されることがあります。

 

 

 

物損事故と人身事故における処分や賠償に関する違い

 

 

 事故を起こしてしまうと、様々なペナルティや処分を下されることがあります。また、被害を被った方がいる場合には損害賠償請求を受けることもあります。

 これらにつき、物損事故ではどのように取り扱われるのでしょうか。人身事故のケースと比較しながら説明していきます。

 

物損事故には刑罰が適用されにくい

 人身事故を起こした場合、生じた結果等に応じて刑罰が適用されることがあります。
 例えば「過失運転致死傷罪」、「危険運転致死傷罪」等の成立により、罰金刑や懲役刑に処される可能性があります。

 一方、物損事故に対して刑罰が適用される例は少ないです。
 物の破壊などの結果は発生させてしまっていますが、過失に基づく物損事故の場合には基本的に「器物損壊罪」は成立しません。器物損壊罪が成立するには,故意(わざと)であるなければならないからです。

 

 ただし、道路交通法に規定されている「運転過失建造物損壊罪」が成立する余地はあります。
 「運転過失建造物損壊罪」は,運転者の過失による建造物の損壊を要件としていますので、故意に破壊をしなかったとしても成立することがあります。その場合、最大6月の禁錮刑または最大10万円の罰金が予定されています。
 とはいえ軽微な損壊に対してもすべて適用されるわけではなく、建造物の効用を失わせるほどの被害(簡単に言うと,建物が使えなくなるくらいの被害が出てしまっている場合という意味です)が生じているときに適用されるものと考えられています。

 

物損事故では違反点数の加算はない

 

 人身事故を起こすと、行政処分として「免許取消」「免許停止」などのペナルティを課されることがあります。そして適用される処分内容は、違反行為に応じた点数により定まります。

 しかし物損事故の場合には違反点数の加算はありません。
 行政処分は人身事故を対象としており、物損事故を起こしても行政処分上は事故扱いにはなりません。
 物損事故に伴い道路交通法違反や建造物の損壊などがあると,その行為に対して点数が加算されることはありますが、純粋な物損事故であれば運転免許証上のいわゆる「無事故無違反」状態を維持することができます。

 

物損事故による損失は自賠責保険で対応できない

 

 強制保険である自賠責保険は、被害者の救済を主目的としています。
 そのため,被害者がおらず加害者しかいない物損事故は,自賠責保険の対象外です。

 発生した損害は,ご自身が入っている任意保険で対応するか、契約した任意保険の内容でカバーされないときには運転者自身ですべて負担することになります。

 物損事故といっても人身事故より大きな被害額になることもありますので、壊れた物のお金が払えないのではないか等賠償責任に不安を感じる方は,対物保険などに加入しておきましょう。

 

物損事故では慰謝料が問題となりにくい

 

 「慰謝料」とは、身体的・精神的な苦痛に対する損害賠償金のことです。
 交通事故の場合には①入通院慰謝料、②後遺障害慰謝料、③死亡慰謝料の3種類があるのですが、いずれも人身事故を原因とするものです。

そのため物損事故では慰謝料を請求されるケースは少ないと言えます。

 しかし「物損事故だから絶対に慰謝料は請求されない」ということではありません。
 被害者の家が壊れて住まいを移すことになったり、家族同然に暮らしてきたペットを死なせてしまったり、希少な芸術作品等を壊してしまったりしたときなどには慰謝料が認められる可能性はあります。

 一方、物損事故でも他人に車両の修理費用や代車費用などの損害を生じさせたときには、損害賠償請求を受けることになるでしょう。
 事故車両となることで生じる評価損、積み荷に対する損害についても同様です。

 

 

物損事故を起こしたときに必要な対応

 

 物損事故の場合、被害者の身体に直接被害が及んでいないため、比較的落ち着いて対応ができると思われます。
しかしながら、物損事故だから何もしなくて良いわけではありません。

 人身事故同様、まずは「安全確保」をしなければなりません。
 二次被害が発生するおそれがありますし、その結果人身事故に繋がるおそれもあります。車を移動させられる場合には安全な場所まで移動させましょう。移動が難しい場合でも発煙筒、三角表示板を使うなどして周囲に事故の発生を知らせることが大切です。

 続いて、「警察への連絡」も必要です。
 物損事故でも交通事故を起こしたのなら警察に連絡することが道路交通法で規定されています。そのため警察への連絡を怠ると道路交通法違反に該当してしまいます。
 また、警察を呼ばずそのまま立ち去ることで当て逃げになってしまうこともありますし、車両保険を適用するために交通事故証明書が必要となるところ、これを発行してもらうためには警察に連絡をしておかなければなりません。

 その後は、被害者の有無や保険の利用の有無などによっても取るべき対応は変わってきます。被害者がいる場合には特に現場の状況証拠を保全しておくことが大切ですし、示談交渉も進めていくことになります。このような場合には弁護士に対応を依頼し、動いてもらうことで、被害者との紛争解決をスムーズに進めることができるでしょう。

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