近藤姫美法律事務所

相続財産に借金があるときはどうすべき?相続放棄の手続・方法や注意点を解説

お問い合わせはこちら

相続財産に借金があるときはどうすべき?相続放棄の手続・方法や注意点を解説

相続財産に借金があるときはどうすべき?相続放棄の手続・方法や注意点を解説

2023/08/25

 

 相続は放棄をすることもできます。どのような場合に放棄をすべきかは、相続財産の内容を見て判断する必要があります。ここでポイントになるのが被相続人(亡くなった方)の借金の有無です。
相続財産に借金が含まれている場合の対応、相続放棄の手続方法やそのときの注意点などを解説していきます。

 

相続財産に借金があるときの選択肢

 相続が開始されたとき、相続人が取り得る選択肢は3つあります。

 1つは「単純承認」です。
「単純承認」をすると、被相続人の財産をすべて引き継ぐことになります。借金も含めてすべて引き継ぎますので、全体として経済的にプラスになる場合に単純承認をすべきです。相続開始後に何ら手続をしなければ、一定期間の経過により単純承認したことになってしまいます。

もう1つは「限定承認」です。
「限定承認」とは、相続により取得したプラスの財産の限度でマイナスの財産を負担するという制度です。借金の有無や借金の額が把握できない場合にとるとよい手段です。限定承認の手続きとることにより、被相続人の予想外の借金が発覚したとしても、相続人が経済的な負担を負う必要はなくなります。ただし、限定承認をするには、相続人全員で限定承認をしなければなりませんから、ややハードルが高い手続です。限定承認を行うには、家庭裁判所にて行う必要があります。

そしてもう1つが「相続放棄」です。
「相続放棄」とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も権利義務も含めすべてを引き継がなくなるという法的な効果があるという手続です。残された資産より借金が上回っていることが確かである場合には相続放棄を選択することになるでしょう。限定承認とは違い、相続人全員で手続きをする必要はありませんので、限定承認ができない場合に相続放棄を検討することもあります。

 

相続放棄の手続・方法

 借金が多く相続放棄をしようとする場合、家庭裁判所にて「相続放棄の申述」をしなければなりません。簡単にその流れを紹介しておきましょう。

1. 必要書類を作成・準備
2. 家庭裁判所にて各種書類を提出(申述)
3. 家庭裁判所にて審理が行われる
4. 裁判官による審判
5. 受理(または受理しない)
6. 結果の連絡が書面で届く

 家庭裁判所での審理は、書面照会・参与員の聞き取り・審問などの手法により行われます。弁護士がついた場合、ご依頼者様本院は家庭裁判所に1度も行かないまま結論が出ることもあります。そして受理されたかどうか問わず、結果は連絡されます。

 

相続放棄の申述ができる人(申述人)

 申述できる人は、原則として「相続人」です。
ただし、相続人が未成年者(または成年被後見人)であればその法定代理人が代理で申述することが認められています。未成年者であれば基本的に親権者が法定代理人となります(成年被後見人であれば成年後見人)。ただし、本人と法定代理人が共同相続人でありその他一定の状況にあるときには特別代理人の選任が必要になります。これは法定代理人が本人と利害関係にあるとき、本人が害されるおそれを除くためです。

 

相続放棄ができる期間

 相続放棄をするには、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に手続を進めなければなりません。いつまでも放棄ができる状態を放置していると、多数の者の法的安定性が損なわれるなどの理由に基づきます。

 「被相続人が亡くなった時点」からではなく、「自分に対する相続が始まったと知った時点」が起算点となりますが、できるだけ早く判断をするようにしましょう。

 ただし、3ヶ月が経過してしまった後でも、後述する通り相続放棄が認められる例もありますので、諦めずに弁護士に相談してみて下さい。

 

相続放棄の手続にかかる費用

 大きな費用はかかりません。以下の2つにわけられます。
●申述人1人あたり、収入印紙800円分
●連絡用の郵便切手代(裁判所によって異なりますが数千円程度です)

 なお、申述時に必要な添付書類を取得するのにも多少の費用(数百円~数千円程度です)がかかります。

 

相続放棄をするのに必要な書類

 申述にあたっては、少なくとも以下の書類の作成と取得をしておかなければなりません。
●相続放棄申述書
●申述人の戸籍謄本(全部事項証明書)
●被相続人の除籍謄本、住民票除票

 

申述後の手続について

 相続放棄の申述をしても、被相続人の債権者は、相続人が相続放棄をした事実を知りません。そのため、債権者から借金を払えと督促される可能性もあります。こうした事態を防ぐために、債権者に対し、相続放棄をした旨連絡をしておくと良いでしょう。

 債権者から相続放棄をしていることが分かる証明書を提出してほしいと言われるかもしれません。そこで、家庭裁判所にて証明書の発行をしてもらうよう申請しましょう。相続放棄の手続きをした家庭裁判所に行ってください。家庭裁判所の書記官に声をかけて、事件番号を告げた上、相続放棄をしたことが分かる証明書がほしいと告げて下さい。申請用紙を出してくれると思いますので、そこに必要事項を記入し、所定額の収入印紙(申請用紙を提出する際にいくらの収入印紙が必要かは教えてくれます。たいていは150円程度です)を添えて提出しましょう。
手続の際は、印鑑と受理通知書、その他本人確認ができるものも持参してください。

 

 

相続放棄に関する注意点

 相続放棄を成立させるため、以下の点には注意しましょう。

 

相続放棄前に借金の一部でも支払わないこと

 相続などに関して定めを置いている民法では、「相続財産の全部または一部を処分」したとき、単純承認したものとみなす旨規定されています。
そのため相続放棄の手続を済ませる前に支払をしてしまうことのないよう注意しなければなりません。
 また、被相続人の持ち物を処分したり、被相続人名義で加入していたサービス(電話やネット回線、光熱費等)をそのまま利用した場合も相続財産を処分したと扱われてしまう可能性がありますので、被相続人名義のサービスは名義を変更した上で利用して下さい。

 ただ、支払いをしたり何か被相続人名義のサービスを利用したからといって、必ずしも相続放棄が認められなくなるわけではありません。処分した内容やその理由によっては放棄が認められる可能性もあります。支払いをしてしまった、被相続人名義のサービスを利用してしまった、被相続人の持ち物(身の回りの家電製品等)を勝手に持ち帰ってしまった等々という方は弁護士に一度相談してみましょう。

 

申述期間を過ぎないこと

 法定の申述期間を過ぎてしまうと、基本的にその後の放棄の申述は受理されません。その結果、単純承認をすることになってしまいます。借金もそのまま引き継ぐことになりますので、注意しましょう。

 ただし例外もあります。「相続財産が一切ないものと信じた」かつ「そう信じたことにつき相当の理由がある」と言えるときには、相続財産の存在につき認識したときから起算して3ヶ月の申述で受理される可能性があります。
 これ以外の場合でも、事情によっては相続放棄が認められる可能性があります。被相続人が亡くなってから3ヶ月以上経過しており、相続放棄ができるのか不安、という方も弁護士に相談することをおすすめします。

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。