後遺障害等級制度とは?等級認定の仕組みや手続きを解説
2023/06/30
交通事故で負傷した場合、支出した治療費から傷害に関する損害額が確定できます。しかし、治療を施しても治ることなく、身体に症状が残り続けることがあります。一般に「後遺症」と呼ばれる状態ですが、自賠法では後遺症のうち特定の基準を満たすものを「後遺障害」としてこれを区別しています。
この記事では、この後遺障害の制度について言及し、等級の仕組みや認定の手続きを解説していきます。
後遺障害等級とは
自賠法では後遺障害を「傷害が治ったとき身体に存する障害」と定義しています。 後遺障害かどうかのポイントになるのは永久残存性です。傷病との相当因果関係を前提に、将来においても回復困難とみられる毀損状態に陥ることが求められます。
また、障害補償という観点からは、労働能力の喪失が生じていることも非常に重要です。
そのため毀損状態が重度であることが後遺障害そのものの要件とはされていません。軽度であっても永久残存性が認められれば、稼働可能年齢までの逸失利益が請求し得ます。
※一部の精神障害では永久残存性がなくても後遺障害として認定され得る
後遺障害の判定は症状固定時点
「傷害が治ったとき」に残存している症状が後遺障害になり得ますが、具体的には「傷病に対して施される医学的に認められた治療方法によってもその効果が期待できない状態」かつ「症状が自然的経過により到達するとみられる最終の状態に達したとき」のことを指します。
要は、きちんとした治療を受けたもののこれが治らず、症状の固定があったとき、ということです。「症状固定」と呼び、損害賠償請求においてこの時期が重要になってきます。
等級は逸失利益・慰謝料等の支払基準となる
自賠責保険では、介護を要するか否かで後遺障害の分類。それぞれにつき程度を分けて認定し、等級別に保険金額が設定されています。
そしてこの後遺障害等級は、逸失利益や慰謝料等の損害賠償請求における支払基準として機能します。逆に言えば、自賠責保険において、一般に後遺症と評価できる症状があったとしても、等級認定がされなければ支払いはなされません。
他方、等級認定がされれば、保険会社に対して等級に沿った基準に従う拘束力を持ちます。
等級の仕組みとルール
等級は、身体障害の程度を定めるものとして、部位ごとに生理学的観点から分類がなされています。
まず、以下10の部位で区分しています。
1. 眼(眼球および瞼)
2. 耳
3. 鼻
4. 口
5. 頭部・顔面
6. 神経系統の機能または精神
7. 胸腹部臓器
8. 体幹(脊柱など)
9. 上肢
10. 下肢
さらに、部位と障害の内容により35の系列に分類がなされます。例えば部位が同じ眼であっても、視力障害なのか、視野障害なのかによって系列は異なります。
複雑になるのは後遺障害が複数存在している場合です。この場合のルールに関して細かく設定されており、基本的に等級は重い方で判断するとされています。つまり、12級と14級がある場合には併合12級となります。
しかし、双方13級以上の場合には、重い方の等級を1つ繰り上げることになります。そのため12級と13級がある場合には併合11級です。
他にも様々なルールが定められており、厳密に等級を判断するためには専門家への相談が必要になってくるでしょう。
等級認定手続きについて
ある等級に認定してもらい損害分を請求するためには、所定の手続きをしなければなりません。
そこで「被保険者からの保険金請求」または「被害者からの損害賠償請求」を自賠会社等が受けたとき、自賠会社等は書類の点検を行い、加害車両の自賠責保険契約を確認します。
調査に関しては公平性を担保するため、保険会社ではなく、第三者機関の損害保険料率算出機構が行いますので、自賠会社等は当該機構に請求書類を送付します。
その後、当該機構の調査事務所が責任の有無、後遺障害の有無や等級の認定と損害額の算定を実施。自賠会社等に対して結果を報告し、その結果に基づいて支払いが行われます。
任意保険に関しては、損害が自賠責での支払いでカバーできない場合に、その部分を支払います。原則として被害者は自賠責保険から支払いを受けて、超過部分を任意保険から受けるという流れになるのですが、任意保険会社のサービスとして「一括払い」が行われています。これにより被害者は任意保険会社から一括で支払いを受けることができ、他方で人保険会社側はその後自賠会社等に請求をして支払いを受けることになります。
等級認定に不服があるときの対応
等級認定に関しては不服申立制度もあります。
不服があるなら異議申立書と資料を、自賠会社等あるいは事前認定を受けた上の一括払いを受けているのなら任意保険会社に対して提出します。提出すべき資料としては、新たな検査結果やカルテといった医学的資料が必要になるでしょう。提出要件ということではありませんが、結論を変えるのであればそれ相応の根拠ある資料が必要です。
そこで実際問題としては主治医との関係性も重要になってきます。医師の協力がなければ不服申立の資料集めが困難になるからです。
なお、提出した書類は損害保険料率算出機構の自賠責保険審査会に送付されて判断が下されます。