交通事故による後遺症が残ってしまったときの対応方法・手続きについて解説
2023/08/18
交通事故の被害に遭うと、様々な種類の損害を被る可能性があります。車両同士の事故なら物損が生じますし、精神的な負荷もかかります。怪我をすることもあるでしょう。怪我を負うと「治療費等の支出が出てしまう」「その間の仕事ができなくなる」といった損失が生じることもあります。
さらに困ることとして、「後遺症」が残ってしまうこともあります。その場合、一時的な負担のみならず、被害者の方は将来にわたり負担を負い続けることになってしまいます。
そこで後遺症に対する救済を受けるには、そのための手続をとったりしなければならない対応があります。
交通事故で後遺症が残ったときの対応の全容
交通事故に遭い、後遺症が残ってしまった場合の対応としてはいくつかを挙げることができます。
例えば、「加害者に対して損害賠償の請求を行う」「その後の生活のため福祉サービス等の支援を受ける」といったことです。
前者に関しては後遺症を負った場合に限った話ではありませんが、後遺症があることにより請求内容の内訳および請求額が変わってきます。
また後者に関連して、経済的支援や精神的支援なども利用できるため、事故後の生活に支障をきたしている場合には利用を検討すると良いでしょう。
後遺障害等級認定を受ける
まずは、損害賠償により救済を得るために「後遺障害等級認定」を受けることが大切です。
一般用語として使われる「後遺症」と「後遺障害」は異なります。
一定の手続を経て、後遺症の程度に応じた等級に認定してもらえる制度があるのです。この制度で認定を受けることができた場合のみ後遺障害と呼びます。
また後遺障害は、傷害が治った時点で身体に残った障害と定義されますので、永久残存性および労働能力の喪失も重要なポイントです。
認定に向けては、医師の診断などを受け、必要資料を集めるなどの作業が必要になります。また「被害者請求」として直接被害者の方が申請を出すこともできますが、「事前認定」として加害者側任意保険会社に手続きを進めてもらう方法などもあります。
保険会社に任せることで手続きに係る負担は軽減されますが、不安のある方は専門家に依頼し、被害者請求をすると良いでしょう。
認定結果に納得がいかない場合に備えて不服申し立てを行うことも可能です。
後遺障害等級に基づく損害賠償請求
無事、認定を受けることができれば、認められた等級に応じた損害賠償請求を行いましょう。
入通院・治療などに要した費用や、その間仕事を休んだことによって生じた休業損害分ももちろん請求できますが、以下では後遺障害の認定を受けた場合に請求できる大きな2項目を紹介します。
請求の内訳1:後遺障害慰謝料
後遺障害等級に基づく損害賠償請求の項目、1つは「後遺障害慰謝料」です。
慰謝料については聞いたことがあるかと思いますが、これは精神的な損害に対する賠償金のことです。後遺症が残っているかどうかに関係なく、怪我をしたのであれば「傷害慰謝料」が請求できますし、死亡した場合には「死亡慰謝料」を請求できます。
後遺症が残り後遺障害として認められた場合、「後遺障害慰謝料」が請求可能となります。後遺障害を負ったことに対する精神的損害を賠償するのが目的です。
後遺障害の程度は1級が最も重いです。後遺障害の等級の数字が小さければ小さいほどに、得られる慰謝料の額は大きくなります。
請求の内訳2:逸失利益
後遺障害等級に基づく損害賠償請求の内訳、もう1つは「逸失利益」です。
仕事で得られる分の賠償金という意味では休業損害とも似た性質を持ちますが、逸失利益は実際に生じた損害ではなく、将来生じる損害分であるという特色があります。
例えば、後遺障害により「手や足が思うように動かせない」といった症状があると、できる仕事が限られたり能率が落ちたりして、本来得られるはずであった稼ぎも得られなくなる可能性があります。この分を等級に応じて計算し、逸失利益として加害者側に請求することになります。
なお、逸失利益の計算は以下のように行います。
逸失利益 = 基礎収入額 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数
「基礎収入額」は事故前までの収入額が基準です。
「労働能力喪失率」は後遺障害の等級に応じて割合を代入することになります。最も重い後遺障害等級である1級なら100%、12級なら14%といった具合で計算式に当てはめていきます。これは、1級なら完全に、12級なら14%労働能力を失ってしまったという意味になり、その分だけを請求することが可能となります。
「ライプニッツ係数」は、労働能力喪失の期間と一定の控除の意味合いを含めた係数です。まだ若く、今後長く働く予定であったのであればその分期間は長くなり結果として請求額も大きくなります。逆に定年間近であったのなら係数の値も小さくなり結果として請求額も小さくなります。
後遺障害等級認定に関する注意点
後遺障害等級認定を受けることは大切ですが、その手続きを進めるにあたってはいくつか注意が必要です。
まずは、手間と時間を要するということです。
望む等級での認定を受けることは簡単ではなく、相応の客観的資料を準備しなくてはなりません。症状を自己申告するだけで認めてもらえるものではないからです。そして資料の準備に時間がかかってしまうと、それだけ救済を受けられるのも遅くなってしまいます。
また、後遺障害として認めてもらうには症状が固定したと言える状態に至らなければなりません。
むやみに後遺障害等級の認定を進めてしまうと治療費等の打ち切りをされてしまうおそれがあるため要注意です。
こうした問題で悩まないためにも弁護士に相談・依頼をしておくと良いでしょう。
福祉的支援の内容
事故の影響で日常生活および社会生活を送るのが難しくなることもあります。 このような状況に陥った方に向けて、福祉サービスの提供がなされています。
例えば、「障害福祉サービス」があります。
「障害福祉サービス」とは、各地方公共団体が障害者等に向けて提供しているサービスで、自立した生活への支援を目的としています。さらに、市町村等が独自に行う「地域生活支援事業」によるサービスや、「自立支援給付」などがあります。
地域生活支援事業には、障害者やその家族からの相談に応じるサービスや、社会との交流を図るための地域活動支援センター、福祉ホームなどが設けられています。各市区町村の障害福祉担当部署にて、具体的なサービス内容が確認できます。
自立支援給付としては、ホームヘルプや介護訪問、ショートステイなどを行う介護給付、その他訓練等給付や相談支援給付、自立支援医療などがあります。
福祉的支援にはさらに「障害者手帳」の制度もあります。
こちらも各地方公共団体が障害者等に向けて提供しています。交付される手帳の内容に応じたサービスを受けることができます。受けられるサービスの内容としては、住宅設備改善費等の支給や車いすや杖の給付、公共交通機関の割引、税制控除の適用などがあります。
市区町村福祉担当部署にて具体的な内容を確認すると良いでしょう。
精神的支援の内容
被害者自身、さらに介護行うことになった家族にも精神的負担はかかります。そこで、「介護相談」および「訪問支援」、重度後遺障害者・介護者家族の交流会なども利用できるようになっています。
いずれもNASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)によって支援がなされています。詳しくはNASVAのWebサイト(https://www.nasva.go.jp/index.html)を確認すると良いでしょう。
経済的支援の内容
経済的支援としては、日本年金機構による「障害年金」、労働基準監督署による「労災年金」および「労災介護給付」、NASVAによる「介護料の支給」および「短期入院・短期入所費用助成」などが用意されています。
障害年金にはさらに「国民年金」によるものと「厚生年金」によるものとがあります。
労災関連の支援制度は業務中や通勤途中の事故でなければ適用されませんので要注意です。