近藤姫美法律事務所

症状固定とは?固定のタイミングや症状固定前後で変わること、認定に関する注意点などを解説

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症状固定とは?固定のタイミングや症状固定前後で変わること、認定に関する注意点などを解説

症状固定とは?固定のタイミングや症状固定前後で変わること、認定に関する注意点などを解説

2023/08/04

 交通事故は,毎日のようにどこかで発生し、比較的身近なトラブルです。事故に遭ってしまった場合、治療費などに関して加害者に対して損害賠償請求を行うことになりなすが、ここで「症状固定」という概念が出てきます。
これは交通事故における損害賠償請求の場面において非常に重要な考え方であり、事前に知識を持っているかどうかで賠償額に大きな差が生じる可能性もあります。
そこで,「症状固定とは何か」「損害額にどのような影響を及ぼすのか」といったこと、その他関連する注意点を解説していきます。

 

 

「症状固定」とは

 「症状固定」というのは簡単に説明すると「治療を続けても症状の改善が見込めない状態」のことです。
より正確には、「医学上認められた治療を行ってもその改善が期待し得ず、残った症状が自然的経過により達すると認められる状態になること」を言います。

 交通事故による症状に対し、リハビリや投薬を行い一時的な回復がみられたとしても、回復が一時的であり全体として症状の経過が平行線であれば、通常は症状が固定したとされます。

 

症状固定は医師が判断する

 症状固定は,交通事故の損害を算定する上で用いられる概念であり、医学的な用語ではありません。
医師が症状固定に関して詳しく知っているとは限りませんが,症状固定に至ったかどうかの判断は医学的な知見によらなければなりません。本当に症状が固定したかどうかの判断は医師が行います。

 当事者間の賠償請求に関しては民事上の問題であり、各当事者による損害額の合意が取れればその内容で確定させることが可能です。
事故後の損害賠償につき、加害者側が加入している保険会社が症状固定の認定を催促してくることがあります。早期に固定が認められることで、加害者側の保険会社が支払う賠償金額が安くなることがあるためです。
被害者側が実質的には症状が固定していなくても、症状が固定したと認めてしまえば,そこから症状が固定したと扱われて支払われる賠償金の額が少なくなってしまう可能性があります。被害者の方は、保険会社の意見を鵜呑みにして,症状が固定したと認めないよう注意しなければなりません。

 

症状固定の判定は何のために行うのか

 症状固定の判定は、症状が固定する前後における慰謝料や賠償金を算出するために行われます。
固定前後で請求可能な賠償金の内容が変わってきますし、その時期によって具体的な金額が変わります。特に固定した時点での症状の内容によっては「後遺障害等級の認定」がなされますので、この認定手続きのためにも症状固定の判定は行われると言えます。

 

 

症状固定で変わること

 症状が固定することで、「治療費」「傷害慰謝料」「休業損害」「逸失利益」「後遺障害慰謝料」の金額や請求可否が変わってきます。
それぞれ詳しく説明していきます。

 

治療費や傷害慰謝料の金額

 交通事故で怪我を負った場合、その怪我を治療するために要した費用や、精神的・肉体的負担に対する慰謝料(傷害慰謝料)が請求できます。
これは症状固定が観念されない、完治する怪我が生じた場合でも請求できます。

 傷害慰謝料の金額は、治療の期間が長いほどあがる傾向にあります。治療のために病院に出向くことになり、その度に治療費の支出も発生し,完治するまで精神的にも負荷がかかり肉体的な苦痛も味わうことになるためです。
怪我が完治したりまたは症状が固定すれば,それ以上治療の必要性はなくなるので、傷害慰謝料の算定期間も終了します。
したがって,症状が固定されるまでが長いほど、治療費・傷害慰謝料の金額は大きくなるのが通常です。

 

休業損害の金額

 交通事故で怪我を負えば、交通事故に遭った以前と同様に働くことができなくなる可能性があります。例えば,入院を要する場合には、入院している期間は働くことができません。働くことができないと,働くことができないことによる損害(休業損害)が生じます。
休業損害を算定するには、これまでの給料などが基礎になるとともに、休業の時期も考慮されます。症状固定までが延びるほど休業損害の金額も大きくなりやすいと言えます。

 ただ、治療費や傷害慰謝料ほど期間に比例するものではありません。症状が固定するまでずっと働けないとは限らないからです。症状は固定していなくても、ある程度治療が進めば職場に復帰することになりますので、治療費ほど単純に計算することはできません。 
ただし,傾向としてはやはり症状固定までが長いほど賠償金が大きくなりやすいため、加害者側としては早期の固定を求めるでしょう。

 

逸失利益や後遺障害慰謝料の請求可否

 ここまでで説明した治療費・傷害慰謝料・休業損害に関しては、症状が固定するまでの期間で算定されます。
他方で、「逸失利益」や「後遺障害慰謝料」は、症状固定後に算定を行います。残った症状の内容・程度に応じて損害額を計算します。

 逸失利益は,後遺障害(後遺症のうち一定の区分に認定される障害)によって将来に渡って失った利益を意味します。重い症状が残っているほど,損失は大きくなります。
 後遺障害慰謝料は、後遺障害を負ってしまったことによる精神的肉体的損害に対する慰謝料であり、こちらもやはり後遺障害の程度が重いほど金額は大きくなります。
症状固定は正確に判断することが大切で、誤ったタイミングで判定することにより本来請求できたはずの賠償金が請求できなくなってしまうリスクを負ってしまいます。

 

 

症状固定時期の目安

 症状固定に関しては、その判断のタイミングが重要です。本来医師が判断するものですが、加害者側との交渉のためにも、ある程度の目安を知っておくと良いでしょう。
以下でいくつかのパターンを紹介していきます。

 

むち打ち症のケース

 よくある後遺障害が「むち打ち症」です。
事故直後に症状がはっきりしないことも多く、これを見過ごして事案を解決させてしまうケースも少なくありません。
そのため何ら怪我の自覚がなかったとしても、むち打ちになっている可能性も考慮して病院で診察を受けることが重要です。

 むち打ち症だと判断された場合、症状固定は事故から6ヶ月後が目安であると考えられています。
もちろん、これは目安であり、個別の状態で判断することが非常に重要ですが、相場としてこの程度の期間を経て固定に至るということを知っておきましょう。

 

骨折のケース

 骨折をした場合、変形障害や短縮障害等が残る可能性があります。
骨折は,治るまでに6ヶ月もかからないことが多く、ギプスで固定して治療する一般的なケースだと2・3ヶ月程度で症状固定に至ることもあります。

 これに対し、手術を要し、その後抜釘などを行うケースだと,症状固定までにより長い期間かかることもあります。
さらに、関節可動に障害が生じる場合だと,リハビリが必要になりますし、その後神経症状が残る場合も、相応に固定日が遅れることになります。

 

複数の後遺障害があるケース

 後遺障害が複数残ることもあるでしょう。
このとき、すべての後遺障害の固定日を統一させるパターンも、個別に認定されるパターンもあります。
各症状の内容や医師の判断によって異なり、結果として請求額が大きく変わってくることとなります。納得がいかない場合には固定日について医師に十分な説明を求めるようにしましょう。

 

 

症状固定に関する注意点

 最後に、交通事故の被害に遭った方が症状固定に関して注意すべき点をまとめておきます。

 

加害者側の保険会社に任せない

 加害者側保険会社が交渉を持ちかけてきます。
具体的な金額の提示や固定のタイミングに関しても提案をしてくることが想定されます。ただ、交渉は当人のみで対応すべきではありません。
損害賠償について何も分からず相手方に任せてしまうと、生じた損害を十分にカバーするだけの金額が受け取れない可能性があります。

 後遺障害等級の認定手続きに関しても、相手方保険会社を介して行ってもらうことは可能ですが、できれば自ら資料を集めて手続きを行いましょう。固定のタイミングのみならず、認定される後遺障害の等級によって逸失利益や後遺障害慰謝料の額がかなり変動します。

 相手方保険会社は交通事故の交渉に慣れているプロですので、対応に不安がある場合には被害者の方も弁護士に依頼することが望ましいです。
また、弁護士に示談を任せることで、相手方が提示してきた金額をそのまま受け入れるのではなく、裁判上認定され得る基準を用いてより大きな請求額を受け取りやすくなります。

 

裁判で症状固定日は変わる可能性がある

 症状固定日が後遺障害診断書にいったん記載されてしまうと覆すことができないのではないかと思うかもしれません。
しかし、その内容が正しいものではないと考えるのであれば諦める必要はありません。実際、この記載は絶対的なものではなく、裁判で固定日が変わる可能性はあります。

 ただし、裁判にてご自身の要求を現実化していくためには、法的な知見も備えていなければなりません。そのため弁護士に相談し、具体的な戦略やその他アドバイスを受けることがおすすめされます。弁護士に早期に依頼することで、事故直後の証拠収集から示談交渉、訴訟対応まで任せられ、被害者の負担も大きく軽減することができるでしょう。

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